国際社会と法の支配ー国際刑事裁判所、赤根智子所長の講演をお聞きして

7月29日に行われたシンポジウム「国際刑事裁判所(ICC)って何だろう?ー世界の正義とルールを考える」(愛知県弁護士会)に参加し、国際刑事裁判所の赤根智子所長の講演をお聞きした。
 周知のように国際刑事裁判所は、いま、ロシア、米国から敵視され、厳しい環境下にある。国際刑事裁判所は、ロシアのウクライナでの民衆虐殺についてプーチン大統領、中東ガザでの虐殺についてネタニヤフ首相に逮捕状を発出した。これに対し、ロシアは逆に赤根所長らをモスクワで訴追して拘禁刑の判決を下し、米国はトランプ大統領が、国産刑事裁判所の職員に対する経済制裁を可能にする大統領令に署名し、その解体を狙っている。そうした中での赤根所長の講演とあって、会場には緊張感があった。
 赤根所長は、国際刑事裁判所の基本的性格について、国際司法裁判所との対比で説明。国連の機関ではなく、ローマ規程の125の締約国の合意=条約に基づくこと、国を裁くのではなく刑事犯罪について人を裁く裁判所であることを覚えてほしいと述べた。そして、問題とする犯罪行為は、ジェノサイド、戦争犯罪、神頭に対する犯罪等に限定されていること、締約国が訴追している場合にはその主権を尊重し受理しないという、補完性の原則を採用していること等を説明した。その上で、現在係属中の事件等を紹介された。
 会場には、高校生、中学生の姿も多く、国際社会の舞台で活躍する赤根所長の生き様にも質問が出された。赤根所長は、世界にたくさんある武力紛争を全部解決することなどできないが一つでも解決して正義を回復し被害者に報いたい、それが自分の生きがいと述べた。国際社会では、力の支配が強まり、法の支配が後退しているとの見方もあるが、決して諦めてはならない、国際社会における法の支配を支えるのは若いみなさん一人一人だと呼びかけた。
 赤根智子所長とは、昨年名古屋に来られた時に酒席でご一緒する機会があり、同じ時代の駒場キャンパスにいたことがわかり話が弾んだ。気さくな人柄の中に、一本筋が通った素敵な女性だった。大国の圧迫感を受け、趣味だった休日の欧州旅行も行きにくいとのことだが、めげずに頑張ってほしい。最後に、米国が国際刑事裁判所からの脱退を呼びかける中、日本政府はこれにはっきりと懸念を表明し、国際刑事裁判所を支持する立場を明確にしている。それで良い。対米追随が習い性になってしまった日本政府が、この態度は支持したい。